デザインリサーチの教科書

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経緯

デザインリサーチの教科書 という本を読んだ。

なぜこの本を読もうと思ったかというと、私個人としては専門はエンジニアリングなので、UI/UXリサーチは専門ではなく、会社でもUi/UXデザイナーが主体となり行っている。 しかし、仕事でUI/UXについて、考え意見を言う機会が多いため、たとえ専門外だとしても、どういうフローでデザインリサーチを行い、課題に対しアプローチを考えるノウハウを知っていないと、自分の意見にも信憑性を持てないなと思った。

そこで手にとったこのデザインリサーチの教科書は、なぜデザインリサーチなのか、から始まり、そもそもデザインリサーチとは何なのか、手順と運用、さらに組織マネジメント、プロダクトマネジメントまでかなり幅広く書かれている。

なので、文章量としてかなり多いので、全部は読み切れていない。 というか、前提として全部読む必要はなく、必要だと思うところ、気になったところを途中の章から読んでくださいということが冒頭に書かれているので、最初のなぜデザインリサーチが必要となったのかとか歴史的経緯などは、すっ飛ばして気になるところだけピックアップして読んだ。

その中で、特に気になった「How Might We」について取り上げたいと思う。

How Might Weとは

「How Might We」とはリサーチプロセスの中で、分析の手法にあたる。 本書ではインサイトを抽出したあとの、機械発見フェーズで登場する。 思いつくアイデアに制約を与えることで、課題を整理し、どういうアプローチを選択するかチームで意思決定するためのもの。

なぜこれが気になったのかというと、自分自身が普段、課題についてソリューションを考える時に、何となく行っていることであるなと思ったから。 おそらく多くの人が、ソリューションを思いついたときは、そうもそもどういう課題なんだっけ?とか、ちょっと視点を変えてみようとか何となく行っていることだと思う。 「How Might We」は、そういった考えるアプローチの種類を整理してくれたものという感じ。

基本構成

How Might Weの基本構成は、「対象となるユーザー」「ゴール」「制約」になり、

「どのようにすれば私たちは【対象となるユーザー】のために【制約】を考慮しながら【ゴール】を提供できるだろうか」

のような文章になる。

この「対象となるユーザー」「ゴール」「制約」の変えていくことで、ソリューションが変わってくるというわけだ。

この本で紹介された例は、空港の課題で。

「子どもを連れた母親は空港のゲートでまっているあいだ、子どもたちを退屈させないように楽しませる必要がある。なぜなら子どもたちは大声を出したり、走り回ったりして、他の乗客をイライラさせることがあるためだ。」

という問題定義(Point of View(着眼点))を扱っている。

以下が紹介されている10個のパターン。

1. 良い面を伸ばす

「我々はどうすれば。子どもたちのエネルギーを他の乗客を楽しませることに使えるだろうか。」

子どもたちの騒ぐエネルギーをポジティブに捉え、乗客を楽しませるというゴールにしてみる。

2. 悪い面を除去する

「我々はどうすれば、子どもたちを他の乗客から分離できるだろうか。」

子どもが騒がしいという要因があるので、他の乗客と分離することをゴールとしてみる。

3. 反対を探す

「我々はどうすれば、待ち時間を旅の楽しみに変えることができるだろうか。」

子どもが騒いでしまうのは、待ち時間が退屈だからであるので、待ち時間を楽しみな時間にするというゴールにしてみる。

4. そもそもの質問

「我々はどうすれば、空港での待ち時間をなくすことができるだろうか。」

待ち時間自体をなくすということをゴールにしてみる。

5. 形容詞で考える

「我々はどうすれば、待ち時間を苦しい時間から心地よい時間に変えることができるだろうか。」

待ち時間はなくせないので、「苦しい」から「心地よい」という形容詞に注目した。他に「かわいい」「楽しい」など、大小・長短・高低・新旧・好悪・善悪・色など表現を当てはめられる。

6. 他のリソースを活用する

「我々はどうするば、他の乗客の自由時間を活用することができるだろうか。」

使えるリースを考える。人材、時間、お金。場所、物、情報、知的財産など。

7. ニーズやコンテキストから連想する

「我々はどうすれば、空港を遊び場のようにできるだろうか。」

子どもが走り回るのは、まるで遊び場のような印象ということから、いっそ遊び場であれば、大人は気に留めないだろうという視点。

8. 原因の立場になって考える

「我々はどうすれば、空港を子どもたちが楽しめる場所に変えることができるだろうか。」

子どもの視点では、探検してみようという気持ちかもしれない。子どもの視点にたって、子どもたちが楽しめる場所に変えることはできないか。

9. 現状を変更する

「我々はどうすれば、子どもたちをおとなしくさせることができるだろうか。」

本質的な原因に戻る。

10. 問題を分轄する

「我々はどうすれば、子どもたちを楽しませることができるか。」 「我々はどうすれば、母親を焦らずに済むか。」 「我々はどうすれば、他の乗客を安心させることができるか。」

現状を変更するとは逆の考え方。問題を一気に解決することが難しい場合は、分轄するといい。

なぜHow Might Weなのか

一見回りくどく考えているようだが、この10パターンを並べておくと、考えるアプローチと導き出すソリューションの質が違うように感じた。 また、チームで意思統一しておくことで、より密度の濃いアイデア出しが可能になるのだそうだ。

サービス開発を例にしてみる

せっかくなので、サービス開発を例に「How Might We」を作成してみようと思う。

想定する課題としては、

自社で運営するECサイトで、ユーザーは商品をカートに入れるが、実際購入完了まで進まず、ドロップするユーザーが一定数いる

という例で考え見た。

1. 良い面を伸ばす

「我々はどうすれば、ユーザーの購入意欲を高められるだろうか。」

ドロップするユーザーは、途中で購入意欲がなくなってしまったと捉え、カートまで入れた意欲を伸ばすということをゴールにしてみる。

2. 悪い面を除去する

「我々はどうすれば、購入完了までのUIをわかりやすくできるだろうか。」

ドロップするユーザーは、購入完了までのフローで、何か迷ったり、分からなかったりしていると捉え、例えばそこの文章だったり、デザインだったりをわかりやすいものに変えられないかというゴールを考えてみる。

3. 反対を探す

「我々はどうすれば、購入完了までのステップの中で、順番を入れ替えることができるだろうか。」

一般的に購入完了までは、商品をカートに入れる、購入方法を選択する、クレジットカードならクレジットカードの情報を入力する、配送先を入力するといったステップがあるが、それらのステップをサービスの入り口からどこかと入れ替えることで、ユーザー体験をよく出来ないかと考えてみる。

4. そもそもの質問

「我々はどうすれば、購入フローをよりシンプルにできるだろうか。」

購入完了までのいくつかのステップでドロップするなら、そのステップを減らせないかというアプローチを考えてみる。

5. 形容詞で考える

「我々はどうすれば、楽しくワクワクするような購入ステップにすることができるだろうか。」

購入ステップが面倒で苦痛なのであれば、それを「楽しい」「ワクワク」という表現方法を考えてみる。

6. 他のリソースを活用する

「我々はどうすれば、購入フローの一部を、別の手段を置き換えることできるだろうか。」

例えば決済サービスはいくつかあったり、購入方法も今やクレジットカードや現金振込だけではなく、様々なプラットフォームが提供しているので、代替えできることがないか考えてみる。

7. ニーズやコンテキストから連想する

「我々はどうすれば、実際の店舗で買い物しているような体験をあたえることができるだろうか。」

これは、実際の店舗で買い物をしたからといって、カートに入れた商品を棚に戻すこともあると思うが、実際に手にとって物を見ているので、一度カートに入れたら棚に戻すことは少ないと考えると、そういうコンテキストからアプローチを連想してみる。

8. 原因の立場になって考える

「我々はどうすれば、カートに入れた後、放置せず購入に進んでもらえるだろうか。」

ユーザーの立場になって、例えばとりあえずカートに入れたが、気が変わったといったユーザーに何かアプローチがないか、とりあえずカートに入れるといったユーザーはどういう思考になるのかを考えてみる。

9. 現状を変更する

「我々はどうすれば、このサイトで買いたいと思えるサイトにすることができるだろうか。」

根本原因に立ち返る。もしかしたらユーザーはカートに入れたものの、別のECサイトで同じような商品を検索して、そちらで購入しているのかもしれない。自分のサービスで購入してもらうことのメリットをどうやってユーザーに感じてもらえるか考えてみる。

10. 問題を分轄する

「我々はどうすれば、ユーザーが困ってるポイントを見つけることができるだろうか。」 「我々はどうすれば、ユーザーに安心感を与えることできるだろうか。」 「我々はどうすれば、ユーザーが求めている商品へたどり着かせることができるだろうか。」

購入までいかない要因として、「特定のステップわかりにくい」や、「購入に不安に思うことがある」、「他のサイトや商品と比較したい」などと複数あるかもしれない。 一度に解決できない場合、できる範囲で一番効果的なものは何かを考えてみる。

おわりに

ということで、今回は「How Might We」について書いてみた。 引き続き読書も読んで終わりではなく、アウトプットも継続していきたい。